- ゆく河の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず。よどみに浮かぶ水泡(うたかた)は、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例(ためし)なし。世の中にある、人と栖(すみか)と、またかくのごとし。-『方丈記』より
 関東にある企業の研究所に勤めた後、山口にある実家のお寺に僧侶として戻ってきた筆者のブログ

老い2013年03月06日 21:12

 「子供には迷惑かけられないから・・・」

 ということを皆さん言われます。
 が、
 努力しても止められないのが「老い」です。

 例えば、
 病原菌やウイルスに対しての抵抗力である免疫。その免疫に携わる重要な細胞に「T細胞」というものがあります。このT細胞は体内の「胸腺(thymus)」という器官内で分化・成熟し、きちんと働けるようになるのですが、胸腺自体は思春期を境にどんどん小さくなり、老人ではほとんど脂肪の塊になってしまいます。
 この胸腺の退縮によってT細胞系の免疫機能の低下が起ります。それは病原菌やウイルス等の「外敵」に対する抵抗性が弱くなるだけでなく、自分の組織を攻撃するような「内敵」になってしまうこともあります。

 胸腺が退縮する原因は分かっていません。仮に若いときの胸腺の組織を冷凍保存していて、年をとって退縮した胸腺と置き換えてみても、そのうちに同じように退縮してしまうそうです。ということは、今流行のiPS細胞で胸腺のもとになる細胞を造って移植したとしても「老いた体」の中では退縮した胸腺の代わりにはならないでしょう。
 逆に老いた体の中の退縮した胸腺を若い体に移植すると、胸腺は大きくなってT細胞を作り出すようになるそうです。不思議ですね。

 もう老化に抗する事はできないのですから、歳をとったら若い人に面倒見てもらって、ある意味迷惑をかけて、楽して暮らしていくくらいじゃないといけないのでは。そのためには下の世代をしっかり骨太に育てていかなきゃいけなかったのでは。

 ということを、平日にパチ○コやに入ってく若者達を見るにつけ激しく思います。

参考文献
多田富雄、「免疫の意味論」青土社(1993)