- ゆく河の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず。よどみに浮かぶ水泡(うたかた)は、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例(ためし)なし。世の中にある、人と栖(すみか)と、またかくのごとし。-『方丈記』より
 関東にある企業の研究所に勤めた後、山口にある実家のお寺に僧侶として戻ってきた筆者のブログ

「供養」2013年08月15日 23:07

「供養」を手近な辞典で調べてみました。

○ [株式会社岩波書店 広辞苑第六版]
 〔仏〕三宝(仏・法・僧)または死者の霊に供物を捧げること。
   
○ [ブリタニカ国際大百科事典 小項目版 2011]
 ヒンドゥー教において特徴的な崇拝の一形式。一般に偶像の形をとった神に,花や,足をすすぐ水などが捧げられる。神像が神殿から出され,食物を供えられ,再び神殿中に祀られるという形をとり,バラモンの臨席を得て犠牲を捧げるベーダ中心の複雑な形式をもった供犠 yaja(動物を捧げる方法;筆者注)とは異なって,それと対照的に考えられるべきものである。仏教では,ブッダや,ブッダの教え,出家修行者への心身すべてをこめて種々な物を供えることをいうが,その内容によって,敬供養,行供養,利供養などの区別が立てられている。また,死者の霊などを弔うことも供養の一つと考えられている。

○ [株式会社岩波書店 岩波仏教辞典第二版]
 原語は,敬意をもって,ねんごろにもてなすこと.特に神々,祖霊や動植物の霊,さらには尊敬すべき人などに対して,供犠や供物を捧げること,またそれによって敬意を表すことを意味する.仏教では仏・法・僧の三宝(さんぼう)や父母・師長・亡者などに,香華(こうげ)・灯明(とうみょう)・飲食(おんじき)・資材などの物を捧げることをいう(供給資養(くきゅうしょう)).略して<供>とも.
(中略)
 なお漢語としては,父母を奉養すること,またその奉養する物品を意味する.『韓非子』外儲説左上・『戦国策』や,『詩経』蓼莪箋・『儀礼』既夕注・『礼記』曾子問注など鄭玄注に用例が見える.


「広説佛教語大辞典」には以上の意味に加えて、
①奉仕すること。
②尊敬心をもって仕え、世話すること。
とあります。

 今日は終戦記念日です。多くの人々がそれぞれの所に参拝し、戦死された方々を供養されたのではないでしょうか。
 さて、「どこそこへ行った行かない」とかまびすしい昨日今日ですが、ここはひとつ「供養」の原意に立ち戻って、先人が命懸けで守ろうとした日本に「奉仕」し「尊敬心をもって仕え、世話すること」が、戦争でなくなられた方々に対する最高の供養になるのではないでしょうか? ねっ、国会議員の方々?!
 そして、その究極の行く先が「世界平和」となればよいのですが・・・。



 ちなみに、浄土真宗の根本経典(一番大事なお経)である「仏説無量寿経」には、阿弥陀仏の四十八願のなかの第二十三願に「諸仏を供養し」のことばが見られ、この願が「供養諸仏の願」と呼ばれています。この場合の意味は「②尊敬心をもって仕え、世話すること」です。

参考文献
 広辞苑第六版、岩波書店
 ブリタニカ国際大百科事典 小項目版(2011)電子版
 中村元、福永光司、田村芳郎、今野達、末木文美士編集、岩波仏教辞典第二版、岩波書店(2002)
 中村元、広説佛教語大辞典、東京書籍
 教学伝道研究センター,浄土真宗聖典-注釈版第二版-、本願寺出版社(2004)